May 26, 2012

交通事故対策@ジンバブエ。



交通事故が多いのです。
統計の数字は忘れてしまいましたが、明らかに多いとのこと。ジンバブエの話です。

当地には比較的長く滞在しているので、自分で車を運転しているのですが、私の一日の運転距離は40kmくらい。それで、週に1、2回は交通事故現場を通りかかってしまうくらいの頻度です。5人、10人が死傷する交通事故のニュースも毎週のように新聞に載ります。

交通事故の原因には、「道路や信号の整備状況が悪い」、「歩行者の安全意識が低い」、「整備不良の車両が少なくない」といったこともあるんですが、一番の理由はコンビと言われる小型乗り合いバスの運転マナーの悪さです。

客を拾うための急停止、交差点内など不用意な場所での停車、無謀な追い越しやUターン、右折車線からの直進や直進車線からの右折(ジンバブエは日本と同じで車は左側通行です)、二重駐車や蛇行運転など、ヒドい運転が多いのです。

このコンビ、元は日本で走っていた812人乗りのバンの中古車のシートを付け替えて、ギュウギュウ詰めで20人位乗れるようにしたもの。なので、交通事故を起こすと死傷者の数も多くなります。

政府や警察も交通事故が多いことを問題と意識はしているようで、対策を打ってはいるんですが、その対策がまた的外れが多くてですね。「すべての車は消火器を搭載しなくてはいけない」、「車の前部バンパーの左右には白の反射シール、後部バンパーの左右には赤の反射シールを貼らなくてはならない」「コンビは営業登録をしなくてはいけない」・・・。結局、警察があちこちで検問所を作って、そこで車を停めてドライバーに難癖つけて小銭を巻き上げる機会を増やすだけになっています。それどころか、巻き上げた小銭が警察官の懐に入るだけでなく、欧米諸国では極めて不人気なムガベ大統領与党の活動資金になっているという話もあったり、果ては検問所自体が交通事故を誘発している実態も聞かれます。

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しかし、なぜコンビが関わる交通事故が多いのか。なぜ、コンビが無謀運転をするのか。

実はこのコンビの運営形態に問題があると思うのです。コンビに使うバスはそれなりのお金がないと買えないので、資金のある人が買って、運転免許を持っている失業者に貸して営業させているケースが多いらしく、その元締めにはインド人、パキスタン人が目立つとか。

バスをたとえば1100ドルとか、月2000ドルとかで借りて、コンビの営業をするわけですが、借りた方としては元締めに払う金額は決まっているので、出来るだけたくさん客を乗せて、できるだけたくさん走った方が稼げることになります。それで、多少の無理を押してでも朝早くから夜遅くまで、客をギュウギュウに詰めて無茶な疾走を続け、しばしば事故を起こす。

そういう構造的な問題には手を付けず、当局は的外れな規制やコンビのドライバーの締め付けで対策を打った気になっています。道路や信号の再整備は時間もお金もかかるので一朝一夕にはできないとは思いますけど、たとえばコンビの運行は認可されたバス会社にしか認めないことにして、運転手はバス会社の社員でなくてはいけない、というルールにするだけでも無謀運転は随分減るんじゃないかと思うんですよね。小金のあるやつがバスを買って、街をブラブラしている若造にコンビを営業させるのが有利な資金運用になっているという状況は良くないでしょう。

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と、ジンバブエの当局の、実態や構造を見ない、その場限りの気分や思いつきに過ぎない交通事故対策を批判的に書きましたけど、最近、似たような話はジンバブエじゃなくても聞きますねぇ。

問題が起きる構造を考えず、問題を起こした人を叩いて溜飲を下げ、対策した気になる。最近、我が日本国でも多い話じゃないですか?

May 13, 2012

どこの自動車ショーでしょう?

まずは、今週末に開催されていた自動車ショーの写真をいくつか。

この日はちょっと雲が多かったけど、この時期、この場所は雨の心配はないので、屋外での開催です。

割と大きなブースを構えていたのは日産。Juke、Almera、X-Trail、Pathfinderから、

GTRまで。


HONDA。バイクの展示も若干。

VolksWagen。

BMW。

トラック、バスとか、働く車の展示コーナーもありました。

Mercedes。


Jaguarのブース。写真の黒い車は最高級サルーンのXJ。一番奥はワインバーになってます。

クラッシック・カーの展示、販売もやってました。写真は世界初の量産自動車、Ford T。

牽引車。この土地らしいもの。

車と関わりの深いレジャー用品のコーナー。

中央ステージ。

この他にも、Mazda、Subaru、Hyundai、Chrysler、Kia、それから中国メーカーの展示も。さらにはKawasaki(二輪車)やYAMAHA(ボート)、整備用ツールの類い、カーナビ等の出展もありましたよ。子どもたちのための移動遊園地もあれば、アイスクリームやバーガー、バーベキューやピザ、ワインやビールも売ってて、楽しいイベントになってました。

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さて、私が今どこに滞在しているか知っている人には驚きはないでしょうが、この自動車ショーが開催されている場所が、日本の方々にとっては意外なのではないかと思って紹介してみました。ひとつ上の写真のステージ下の表示(看板じゃなくて、電光表示板です)を見ていただければ分かるのですが、ここはジンバブエなのです。

ぱらぱらと黒人も写っていますけど、白人も多いです。ちなみに、これだけ日本メーカーの展示があるのに、会場で見かけた日本人の関係者は一人だけでした。



2009年初頭にはハーパーインフレの末に経済崩壊に至っていた国、ジンバブエの今です。

まあ、首都ハラレと地方との間には極端な格差があるので、ハラレで開催されているこの自動車ショーをもってジンバブエを語ることはとてもできないのですが、この国は元々英国系を初めとするヨーロッパ系住民によって拓かれ(植民地化され)、1990年代までは中進国といっていい水準の国だったんですよね。それで、首都にはまだ白人住民もそれなりに住んでいて、ここだけ見てるととてもアフリカじゃない雰囲気でした。

May 08, 2012

「希望の国の不幸な若者たち」


 斜めにしか読んでいないんですけど、古市憲寿氏の「絶望の国の幸福な若者たち」という本は、すごく端折って言うと、日本の若者たちは今よりも将来の方が良くなるという感覚を持てないので、とりあえず過不足のない今の状態を幸福だと感じる構造がある、という話だったように覚えています。

 というとこれは、今私が滞在しているアフリカの貧困国のようなところでは話が反対になりますよね。「アフリカ」で一括りにするのは雑過ぎるのは分かってますが、まあ一般に後発発展途上国のことと考えていただくと、そういう国々では今がヒドイ、ところによってはこれより悪くなりようがないという有様なので、今現在に不幸を感じ、将来はきっと良くなると希望を持つという理屈になる。「絶望の国の幸福な若者たち」の反対、「希望の国の不幸な若者たち」です。「貧しいけれども子どもたちの瞳は輝いていました。」っていうやつです。そして確かに、アフリカの途上国の若者たちの間にはこの種の希望が存在していますよ。

 これ、要は「明日は今日より豊かになる」っていうだれにでも当てはまりそうな一般的な希望は、言外に今は貧しいという前提があるということです。たぶん、物知り顔で「日本は将来に希望が持てない社会だ」なんて嘆いて見せている人たちの言う希望もこの「一般的な希望」のことで、だとしたらむしろ、そういう「一般的な希望」を持つ人が少ないということは、豊かな社会だということの証左になるんじゃないでしょうかね。

 所得倍増だのと列島改造だのと言って、みんなが希望に満ちているように見えた時代の希望も「明日は今日より豊かになる」っていう「一般的な希望」で、そこに暮らした個々人は日々邁進していれば、確かに豊かになっていったんでしょう。学校を出て、会社に勤めてバリバリ仕事をして、適当なところで結婚して郊外に家を買い、そこで子育てをして温かい家庭を築く、そういう幸せの定型があって、現にその定型の幸せが実現されていった、みんなそれなりに「一般的な希望」に実現に近付いていることが実感できた時代だったんだと思います。

 そして、日本はその「一般的な希望」の時代を卒業した。で、それが本来の意味で先進国っていうことじゃないのかなと。ひたすらに豊かになることを追い求めるだけなら途上国です(※)。そしてその豊かさに到達した先の「希望」はもはや「一般的な希望」ではあり得ない。個人個人が自らのミッションを背負って生きる、多様性の時代になっているんでしょう。「一般的な希望」ではなく、それぞれの「多様な希望」が活きてくる時代だと思いたいよね。

「一般的な希望」==>今は貧しいけど、明日は今日より豊かに。
「多様な希望」==>豊かな社会は実現したので、それぞれが新たな創造を。

 「多様な希望」の中身は学校も政府も、親でさえも示してくれない。まして「子どもたちに希望を」なんて空疎な言葉を吐いてる人に期待するのは無理でしょうねぇ。

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※アラブの産油国とか、GDPだけ見ると先進国なんだけど、なんか先進国な感じがしない。他方でそれより経済的には貧しい南欧諸国は一応先進国扱い。「豊かさを追い求めるだけなら途上国、その先を見据えるのが先進国」と考えると、なんとなくそれも合点がいくような気がする。